フランスバロックは劇場趣味がお好き 終幕!

ソナール・カンタンド公演「フランスバロックは劇場趣味がお好き」公演が終わりました。

今回は僕にとって挑戦で冒険的なプログラムでした。フランスバロック、それもカンタータは日本ではなかなかコンスタントに演奏されず、まだまだ未開の分野です。これまでクレランボー、ラモーなどそれでもメジャーなカンタータは演奏してきましたが、今回はニコラ・ラコ・ド・グランヴァルNicolas Racot de Grandvalとフィリップ・クルボワPhilippe Courboisという、古楽の人でも「誰?」というまったく無名の2人をメインにしました。
それでも器楽曲に有名な(ただそれもなかなか生では聴くことの少ない)クープランの《パルナソス山、またはコレッリ讃歌》をチラシにあげました。
案の定、事前のチケット売り上げが思わしくなく、集客に苦労しました。(;^_^A
でも、僕らはせっかく自分らで企画するのだから、仕事ではできないもので、そして当時は多様な作曲家がいて、実に豊かな音楽事情だった事を知ってもらいたい、僕らも実感したいと思いました。

今回の幕開けは、ルイ・ガブリエル・ギユマンLouis-Gabriel Guillemainの無伴奏ヴァイオリンの為の12のカプリースからのプレリュードで始めました。ギユマンはバロック時代のパガニーニと言っても過言でさない作曲家で、これは顎あてのないバロックヴァイオリンで演奏可能なのか?というくらい技巧的で、ものすごいハイポジションは当時のヴァイオリンの限界まで使ってます。まさにヴィルトゥオーゾですが、時代を2つくらい飛び越した印象がありつつ、バロックでもあり、そしてCapriccio自由闊達、気ままで即興的。僕はこの作品を次に歌うグランヴァルのコミック・カンタータ《グレゴワールGrégoire》の前奏曲として組みました。

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僕は曲の途中から、ワインボトルを持って登場。というのもこの《グレゴワール》はコミック・カンタータの名の通り、実に愉快でコミカルなもので、主人公は酒蔵の奥で酔っ払ってる酒飲みのグレゴワール。
愛にかまけて、なかなか酒の神バッカスがやってきてくれないってボヤいているところに、やっとこさバッカスがやってきて、ごめんごめんとばかりに、「もう安心しろ、恋の炎は消してやるから、忘れて飲めや」と偉そうに言い残して去ってゆくってというもの。

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今回の会場は1921年に建築された歴史的建造物で、現在は礼拝堂や講堂として使用されてます。結構高めの舞台だったので、楽器陣を舞台下に配し、オーケストラピットの様にし、歌は舞台上と下とを立体的に使いました。

カンタータが終わると一転、「悪魔のごとく演奏する」と評されたフォルクレのガンバソロへ。ここでもちょっとして仕掛けが。フランス物はそれぞれの曲に標題が付いており、その中から次に繋がるように「クープラン」を弾いてもらいました。
フォルクレが感じるクープランの音楽の肖像画。そして、その本人。フランソワ・クープランの登場。
今年はバロックの作曲家として有名なコレッリの没後300年。それを記念して、コレッリを敬愛したクープランが描いた、《パルナソス山、もしくはコレッリ讃歌》を。
この曲はトリオ形式のソナタで、7曲に渡ってコレッリを音楽のアポロンがまつパルナソス山に導くという音楽絵巻物。

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ここで休憩に入り、第2部はフランスバロックの巨匠ラモーの《クラヴサン合奏曲》より第1コンセールを。
チェンバロのソロが華やかな、まさにフランスバロックの王道。

そしてプログラムには書かなかったルイ・クープランのプレリュードをカンタータの前奏曲に、いよいよフィナーレへ。
最初のカンタータがコミカルに対し、最後はシリアスに。ギリシャ神話でももっとも有名なストーリーで、音楽史の中でも節目節目で重要な役割を担ったオルフェウス物語をフィリップ・クルボワPhilippe Courboisが作曲したカンタータ”Orphée”を。クルボワは1705-1730年頃に活躍したのは判っているものの、生没年不詳のミステリアスな作曲家。その音楽は実に劇的!そしてオルフェウスが冥界の王プルトンにエウリュディケを連れ戻す事を願う為に冥界に降りる際に、ヴァイオリンパートが2声になるので、リラの代わりにフルートを持って登場。

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残念ながらエウリュディケを取り戻せなかったオルフェウスに、幸せを待ちきれない者は往々にしてそれを失うのだという教訓と共に幕を閉じました。

そして今回のプログラムは二重、三重に仕掛けをしてました。
神話では、オルフェウスは音楽の神アポロンの息子であり、しかもエウリュディケを失った悲しさのあまり女性不信になり、それに憤慨したバッカスの女性使徒達にオルフェウスは八つ裂きにされます。
クープランのコレッリ讃歌はアポロンの元にも導く曲、そして最初のグレゴワールはバッカス神、最後にクルボワのオルフェウスとシンメトリーを描きました。

そしてアンコール。時期も秋になった所で、ボワモルティエが作曲したカンタータの組曲《四季》より「秋」から、愛に傷ついた心を酒で癒そうという、バッカス神を讃える歌で、最初のグレゴワールと関連づけて終わりました。

マイナーながら凝りに凝ったプログラムをたててしまったのですが、僕は残念ながらお酒が飲めない…。そんな僕が歌うバッカスというオチをつけて、今回の劇を閉じたいと思います。

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